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身体のコラム

生理痛について東洋医学的視点から徹底解説!症状別に漢方・食事・セルフケアの対処法もご紹介

生理痛(医学的には「月経困難症」と呼ばれます)について、東洋医学と西洋医学の視点からそれぞれの病態・症状・治療法を比較しながら詳しくご説明いたします。


◆ 東洋医学からみた生理痛の理解

◉ 病態の理解

東洋医学では、体全体の「気・血・水」のバランスや、五臓六腑(とくに「肝」「腎」「脾」)の働きを重視して生理痛を理解します。特に「肝」は血を蔵し、情緒とも深く関係しており、生理の調整に重要です。

主な病態分類(弁証)

  1. 肝気鬱結(かんきうっけつ)
     → ストレスや情緒の乱れで「気」の流れが滞る。気滞により血の流れも悪化し、痛みが生じる。
     → 症状: 下腹部の張り、痛み、胸の張り、イライラ。

  2. 瘀血(おけつ)
     → 血の流れが滞り、古血が留まって痛みを起こす。経血が黒ずむことも多い。
     → 症状: 刺すような痛み、経血が暗紫色で塊が混じる。

  3. 寒湿凝滞(かんしつぎょうたい)
     → 冷えや湿気により子宮の血流が阻害され痛みが発生。
     → 症状: 冷え性、温めると楽になる痛み、経血量が少なめ。

  4. 気血両虚(きけつりょうきょ)
     → 慢性的な虚弱体質、貧血などで気と血が不足し、生理時に子宮へのエネルギー供給が足りなくなる。
     → 症状: 痛みは軽めでも持続する、疲労感、めまい。


◆ 西洋医学からみた生理痛の理解

◉ 病態の理解

西洋医学では、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンという物質が生理痛の主因とされています。これが子宮の強い収縮を引き起こし、痛みの原因になります。

主な分類

  1. 原発性月経困難症
     → 思春期以降の若い女性に多く、器質的な異常(病気)はなく、プロスタグランジンの過剰分泌によるもの。

  2. 続発性月経困難症
     → 子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症など、基礎疾患が存在する場合。


◆ 生理痛の主な症状一覧

✅ 1. 下腹部の痛み

  • 一番代表的な症状です。

  • 鈍い痛みからキリキリとした鋭い痛みまで個人差があります。

  • 痛みは生理の開始直前から始まり、1~3日目がピークのことが多いです。

✅ 2. 腰痛

  • 子宮の収縮により腰にまで痛みが放散します。

  • 冷えや血行不良が関係していることも。

✅ 3. 吐き気・嘔吐

  • プロスタグランジンの影響で胃腸が刺激され、吐き気を感じることがあります。

✅ 4. 頭痛

  • ホルモンバランスの変化(特にエストロゲンの低下)により、偏頭痛や緊張型頭痛が起こる場合があります。

✅ 5. 下痢・便秘

  • プロスタグランジンは腸の動きも活発にするため、下痢になることがあります。

  • 逆に、体が冷えると便秘になることもあります。

✅ 6. イライラ・気分の落ち込み

  • ホルモンの変動により、情緒不安定になる方が多いです。

  • PMS(月経前症候群)とも関係します。

✅ 7. 疲労感・倦怠感

  • 痛みやホルモン変動によって、全身がだるく感じることがあります。

✅ 8. 発汗・手足の冷え

  • 自律神経の乱れにより、異常な発汗や手足の冷えが起こることもあります。


◆ 注意が必要な症状

以下の症状がある場合は、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れている可能性があるため、婦人科での受診をおすすめします:

  • 市販の鎮痛薬が効かない

  • 生理痛が年々ひどくなっている

  • 性交時にも痛みがある

  • 大量出血やレバー状の塊が多い


◆ 症状の感じ方は人それぞれ

生理痛は「体質・年齢・ストレス・生活習慣」など多くの要素が絡んでおり、人によって症状の強さや種類は大きく異なります。痛みを我慢するのではなく、早めにケアや相談をすることが大切です。


◆ 症状別:対処法まとめ

✅ 1. 下腹部の痛み(代表的な生理痛)

◉ 漢方薬

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):冷え・貧血体質に

  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):瘀血(血の巡りの悪さ)タイプに

  • 加味逍遥散(かみしょうようさん):ストレスによる痛みに

◉ 食事

  • 生姜、ねぎ、にんにくなどの体を温める食材

  • 鉄分豊富なほうれん草、レバー、小松菜など(貧血対策)

  • 甜茶やよもぎ茶などの温性のお茶もおすすめ

◉ セルフケア

  • お腹・腰の温め(カイロや湯たんぽ)

  • ストレッチやヨガで骨盤まわりの血流を促す

  • ツボ押し(関元、三陰交)が効果的


✅ 2. 腰痛

◉ 漢方薬

  • 温経湯(うんけいとう):冷えが強い方におすすめ

  • 八味地黄丸(はちみじおうがん):加齢や腎の虚弱タイプに

◉ 食事

  • 黒ごま、黒豆、山芋など「腎」を補う食材

  • 温性のスープや鍋料理で内臓から温める

◉ セルフケア

  • 腰を冷やさないよう、腹巻き・厚手の下着を活用

  • 寝る前に軽くストレッチして腰の緊張を緩和


✅ 3. 吐き気・下痢

◉ 漢方薬

  • 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう):胃腸虚弱の吐き気に

  • 五苓散(ごれいさん):水分代謝異常・下痢に

◉ 食事

  • 消化の良いおかゆ、うどん、スープなど

  • 生もの、脂っこいもの、冷たいものは避ける

  • 梅干し・大根おろしなど胃を整える食品を活用

◉ セルフケア

  • おへその少し上にカイロを貼って胃を温める

  • 横になって、右側を下にして安静に


✅ 4. 頭痛・イライラ

◉ 漢方薬

  • 加味逍遥散(かみしょうようさん):イライラ・情緒不安定に

  • 釣藤散(ちょうとうさん):頭痛・高血圧気味の方に

◉ 食事

  • カフェインは控えめに(反動で悪化する場合あり)

  • セロトニンを助けるバナナ・ナッツ・ヨーグルトなどを摂取

  • リラックスできるハーブティー(カモミール、ラベンダー)

◉ セルフケア

  • 頭痛がひどいときは、暗く静かな部屋で安静

  • アロマ(ラベンダー、ゼラニウム、クラリセージなど)を活用

  • ツボ:百会(ひゃくえ)・合谷(ごうこく)


✅ 5. 冷え性・手足の冷え

◉ 漢方薬

  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう):手足の冷えに特化

  • 真武湯(しんぶとう):冷えと下痢を伴う場合に

◉ 食事

  • 体を温める食材(かぼちゃ、にんじん、しょうが、黒豆)

  • 冷たい飲み物・生野菜・アイスは避ける

◉ セルフケア

  • 足湯、湯たんぽ、入浴(ぬるめのお湯に20分以上)

  • 靴下の重ねばきやレッグウォーマーなどで保温

  • 三陰交・太谿などのツボを温灸や指圧で刺激


◆ おすすめの生活習慣

  • 定期的な運動(軽いウォーキング・ヨガなど)

  • ストレスを溜めない(深呼吸、瞑想、趣味の時間)

  • 睡眠をしっかりとり、ホルモンバランスを整える

  • 冷たい飲食や身体を冷やす服装は避ける


◆ 症状別ケア方法まとめ

症状 対処法(漢方) 対処法(食事) セルフケア
下腹部痛 当帰芍薬散など 温性食材 温め・ツボ
腰痛 温経湯など 黒ごま・山芋 腰の保温
吐き気・下痢 半夏瀉心湯など おかゆなど 安静・胃の温め
頭痛・イライラ 加味逍遥散など バナナ・ナッツ アロマ・ツボ
冷え性 当帰四逆湯など 生姜・黒豆 足湯・入浴

◆ 治療法の比較

観点 東洋医学 西洋医学
主な治療法 漢方薬、鍼灸、食養生、生活指導 鎮痛薬(NSAIDs)、低用量ピル、ホルモン療法
目標 体質改善と根本治療 症状緩和と原因疾患の治療
即効性 比較的ゆるやか(継続が必要) 比較的高い(即効性あり)
副作用 比較的少ない(体質による) 薬による副作用あり(胃痛、吐き気など)


◆ まとめ

比較視点 東洋医学 西洋医学
アプローチ 全身のバランスを整える 局所的な原因を抑える
体質に応じた治療 〇(個別対応) △(一般的処方が多い)
長期的な改善
即効性
副作用の少なさ

両方の医学を組み合わせた統合医療的なアプローチも現在注目されています。たとえば、漢方を服用しつつ鎮痛剤も使用する、鍼灸と西洋医学の診断を併用するなどの方法です。


参考文献・資料:

  • 日本東洋医学会『漢方医学テキスト』

  • 厚生労働省e-ヘルスネット「月経困難症」

  • 日本産婦人科学会ガイドライン(2023)

佐藤香織

【鍼灸師/鍼灸専門学校の教員資格保有/薬膳アドバイザー/セミナー講師】 2007年より施術の世界へ。冷え性、自律神経、運動器疾患、小児の治療など様々な疾患に対応いたします。

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