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東洋医学

胃の大切さ ― 東洋医学から見た身体の中心

東洋医学において「胃」は、単に食べ物を消化する器官ではありません。
胃は「脾」とともに 後天の本(こうてんのほん) と呼ばれ、人が生まれてから生命活動を維持するためのエネルギーを生み出す中心と考えられています。

私たちが口にする飲食物は、まず胃によって受け入れられ、消化されます。
そして、その精微な栄養は脾の働きによって全身へ運ばれていきます。
つまり胃の働きが弱くなると、身体全体の気血が不足し、疲労感や冷え、免疫力の低下など、さまざまな不調が現れやすくなります。

東洋医学では、胃には 「受納(じゅのう)」と「腐熟(ふじゅく)」 という働きがあるとされています。

受納とは食物を受け入れる働き、腐熟とは食物を消化し、体内で利用できる状態へ変える働きです。これらの機能が正常に働いていれば、食欲は安定し、体力も保たれます。
反対に胃の働きが乱れると、食欲不振、胃もたれ、嘔吐、胸やけなどの症状が現れます。

■胃の不調のタイプ(東洋医学)

東洋医学では、胃の不調を原因によっていくつかのタイプに分けて考えます。

  1. 胃気虚(いききょ)
    胃のエネルギーが不足している状態です。食欲不振、食後のだるさ、疲れやすさなどがみられます。慢性的な体力低下のある方に多い傾向があります。
  2. 胃寒(いかん)
    胃が冷えて働きが弱くなっている状態です。冷たい飲食物を好む方や冷え体質の方に多く、温めると楽になる胃痛が特徴です。
  3. 胃熱(いねつ)
    暴飲暴食や刺激の強い食事などによって胃に熱がこもっている状態です。食欲が強く、胸やけ、口臭、便秘などが起こることがあります。
  4. 気滞型(きたいがた)
    ストレスによって胃の気の流れが滞る状態です。みぞおちの張り、げっぷ、食欲の波などが現れます。現代社会では特に多くみられるタイプです。

■中脘・鳩尾(きゅうび)のツボ

胃の働きを整える代表的なツボとして 中脘(ちゅうかん) と 鳩尾(きゅうび) があります。

  • 中脘
    みぞおちとへその中間に位置するツボで、胃の募穴として知られています。胃の機能を調整する重要なポイントであり、胃もたれ、食欲不振、胃痛、吐き気など、さまざまな胃の症状に用いられます。
  • 鳩尾
    みぞおちの中央にあるツボで、特にストレスによる胃の不調に用いられます。精神的な緊張でみぞおちが詰まるように感じる場合などに有効です。

■鍼治療と透熱灸

これらのツボには 鍼(はり)や灸(きゅう) を用いた治療が行われます。

鍼治療
中脘に鍼を行うことで、胃の気の流れを整え、消化機能を高めることが期待できます。
特に胃気虚や気滞による症状に効果的とされています。

透熱灸(とうねつきゅう)
透熱灸は直接灸の一種で、皮膚にしっかりと熱刺激を伝える方法です。
胃が冷えている胃寒タイプの方には特に効果が期待され、胃を温めて働きを活性化させます。
灸の温熱刺激は自律神経にも作用し、胃の動きを整えると考えられています。

■背中の兪穴(ゆけつ)による治療

東洋医学では、内臓は背中の 兪穴(ゆけつ) と深く関係していると考えられています。
胃の治療では、特に 胃兪(いゆ) というツボが重要です。

胃兪は背中の第12胸椎付近にあり、胃の機能を調整する代表的なツボです。
この部分に鍼や灸を行うことで、消化機能を高め、慢性的な胃弱や胃痛の改善が期待できます。

また、胃兪とともに 脾兪(ひゆ) を治療することで、消化吸収の働きをより高めることができます。
腹部の募穴である中脘と、背中の兪穴である胃兪を組み合わせる 募兪配穴(ぼゆはいけつ) は、東洋医学の基本的な治療法の一つです。

■漢方

胃の症状でよく処方される漢方は以下の通りです。

  • 六君子湯 ― 胃の気を補う処方
    六君子湯は、胃腸が弱く、食欲不振や胃もたれが起こりやすい人に用いられる代表的な漢方薬です。体力が低下しているときや、胃の働きが弱くなっているときに、胃の気を補い、消化吸収を助ける働きがあります。
    この処方は、もともと脾胃を補う「四君子湯」に、生薬の 陳皮 と 半夏 を加えたものです。これにより、胃の働きを高めるだけでなく、胃の中の停滞を改善し、吐き気や胃もたれなどの症状を和らげます。
    現代では、慢性胃炎、食欲不振、機能性ディスペプシアなどの症状に用いられることも多く、胃腸虚弱の方にとって重要な処方とされています。
  • 補中益気湯 ― 気を補い体力を高める処方
    補中益気湯は、胃腸の働きを高めながら、全身の「気」を補う代表的な補剤です。東洋医学では、疲れやすい体質や慢性的な倦怠感は「気虚」と呼ばれる状態と考えられます。
    この処方は、胃腸の働きを整えることで気血の生成を助け、体全体のエネルギーを高める作用があります。そのため、食欲不振、慢性疲労、夏バテ、病後の体力低下などに用いられることが多い漢方薬です。
    補中益気湯は、単に胃の症状だけを改善するのではなく、胃腸を強くして体全体の活力を高めるという特徴があります。まさに「胃を整えることで生命力を高める」という東洋医学の考え方を象徴する処方と言えるでしょう。
  • 安中散 ― 胃を温め痛みを和らげる処方
    安中散は、胃が冷えて起こる胃痛や胃もたれに用いられる漢方薬です。東洋医学では、冷えによって胃の働きが低下する状態を「胃寒」と呼びます。この状態では、温かいものを飲むと症状が楽になることが多くあります。
    安中散には、胃を温める作用を持つ生薬が多く含まれており、胃の痛みや不快感を和らげ、胃の働きを整える効果があります。冷えによる胃痛や慢性的な胃の不調、神経性胃炎などに用いられることがあります。
    特に冷え体質の方や、ストレスによって胃の調子が乱れやすい方に適している処方とされています。

※漢方薬は体質によって適するものが異なりますので、医師や薬剤師などの専門家に相談することが大切です。

■胃は生命力の源

東洋医学には「胃気があれば生き、胃気がなければ死す」という言葉があります。
それほどまでに、胃の働きは生命力に深く関わっていると考えられています。
どれほど良い治療を行っても、胃が弱っていれば栄養を十分に吸収することができず、身体は回復しにくくなります。

現代社会ではストレスや不規則な食生活によって、胃の不調を抱える方が増えています。
しかし、東洋医学にはツボや鍼灸を通じて胃の働きを整え、身体全体のバランスを回復させる知恵が長い歴史の中で培われてきました。

胃を大切にすることは、すなわち 生命の力を養うこと につながります。
日々の食生活とともに、胃の働きを意識することが健康維持の第一歩と言えるでしょう。

佐藤香織|鍼灸師

2008年より施術の世界へ。

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