春になると、光がやわらかくなり、風にほのかな温もりが混じりはじめます。
桜が咲き、街の空気もどこか弾むようです。
けれど私はここ数年、春になると特有のめまいを覚えます。
景色が激しく回るわけではありません。
ただ、足もとがふわりと浮くような、心もとない感覚。
東洋医学では、春は「肝(かん)」の働きが高まる季節とされています。
肝は血を蓄え、気の流れをのびやかに保つ役割を担います。
そして春は「風」の性質を持つ季節。
体の中の気もまた、上へ上へと昇りやすくなるといわれます。
生活環境の変化や寒暖差、緊張やストレス。
それらが重なると、気が上に偏る「肝陽上亢(かんようじょうこう)」のような状態になり、
頭がふらついたり、めまいを感じたりすることがあるのです。
真面目にがんばりすぎる人ほど、
春の風にあおられるように、心身が揺れやすいのかもしれません。
めまいを感じる日は、
気を下へと導き、巡りを整えるツボをやさしく刺激します。
◯ 太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨の間にあるツボ。
肝の気を整え、のぼった気を鎮める働きがあります。
痛気持ちいい程度に、ゆっくり呼吸をしながら5〜10秒押し、数回繰り返します。
◯ 百会(ひゃくえ)
頭のてっぺんにあるツボ。
気の集まる場所とされ、自律神経を整える要穴です。
指の腹でそっと包むように触れ、深く息を吐きます。
強く押しすぎないことがポイントです。
太衝で“下へ”、百会で“整える”。
その両方を行うことで、春の高ぶりをやわらかく鎮めます。
私は、鍼灸師なので鍼を刺します
■春のめまいにやさしい養生
朝は少し早めに起き、深呼吸をひとつ。
温かいお茶を飲み、目を閉じて肩の力を抜きます。
酸味は肝を養うとされるため、
梅干しや柑橘を少し取り入れるのもよいでしょう。
そして何より大切なのは、
夜更かしを避け、しっかり眠ること。
血を養い、肝を支える基本です。
スマートフォンや情報から少し距離を置くことも、
気の上昇を抑える助けになります。
春のめまいは、弱さのしるしではありません。
冬のあいだ内にこもっていた気が、外へ向かうときの自然なゆらぎ。
風に揺れる若葉のように、
私たちもまた、揺れながら季節に順応していきます。
もし、ふわりと世界が遠のくような感覚に出会ったら、
それは「少し立ち止まってください」という体からの合図かもしれません。
春の光の中で、深呼吸をひとつ。
無理をせず、整えながら、この季節を味わっていきたいものです。
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