東京都五反田の女性専用SATO針灸院

軸が整えば、全体は静かに変わる。

WEB予約
公式LINE
Instagram
SCHOOL
東洋医学

透熱灸、芯まで届くあたたかさ

ここ最近、暦の上では春を迎えているはずなのに、底冷えするような寒さが続いています。
朝、白い息を吐きながら、「ああ、まだ冬は残っているのだな」と感じる日々です。

そんな気候の影響でしょうか。ここへきて、体調不良を訴える患者様が増えてきました。お一人おひとりお話を伺うと、不思議なほど共通しているのが、

「冷えが芯まで入り込んでいる感じがする」

という表現です。

表面が冷たいというよりも、体の奥深くがじんわりと冷え切っている感覚。温めてもなかなか抜けない、重たく居座るような冷えです。

東洋医学では、こうした状態を「寒邪(かんじゃ)」の侵入ととらえることがあります。寒邪は、文字通り“寒さという邪気”。皮膚や毛穴から体内へ入り込み、気血の巡りを滞らせると考えられています。

毛穴という毛穴から、冷たい風が忍び込み、体の深部にまで居座ってしまったのかもしれません。

そんな時はお灸の出番です。
台座灸のやわらかな温もりも心地よいのですが、今回大活躍したのは、透熱灸。
もぐさを直接据え、瞬間的に強い熱を入れ、芯まで通す施術です。

火がともり、じわりと熱が入る。
そして一瞬の鋭さのあと、深部からふわりと広がる温かさ。
皮膚の表面ではなく、体の奥に浸透して細胞が目を覚ますような感覚があります。

東洋医学では、「冷え」は万病のもとといわれます。特に女性にとって冷えは大敵です。
女性は血によって体を養う存在とされ、その血の巡りが滞ると、さまざまな不調につながると考えられています。

冷えが続くと――
・月経痛や月経不順
・肩こりや腰痛
・神経痛
・むくみ
・慢性的な疲労
こうした症状があらわれやすいといわれます。

冷たい体は、川の流れが止まりかけた状態に似ています。
水が動かなければ濁るように、血もまた巡らなければ滞ります。
透熱灸は、その滞りに小さな火を灯し、流れを再び動かすきっかけをつくる施術のように感じられます。

もちろん、やみくもに熱を入れればよいわけではありません。体質やその日の状態を見極めながら、必要な場所に、必要な分だけ。だからこそ、透熱灸は繊細で、同時に力強い技術なのだと思います。

施術後、手足の先までじんわりと温まり、肌にほんのり赤みが差します。
「冷え」が抜けると、不思議と心まで軽くなるのです。

現代は冷えやすい環境に囲まれています。冷房、薄着、ストレス、過労。知らず知らずのうちに体は冷え、内側の火が弱まっています。

だからこそ、寒さが戻るこの季節に、改めて思います。
女性に冷えは禁物。
温めることは、甘やかすことではなく、守ることなのだと。

透熱灸の小さな火は、ただ熱いだけではありません。
それは、体の奥にある生命の火を思い出させてくれる、静かな灯りなのです。

余談ですが、昔こんなことがありました。

あるフィリピン人の方から、施術後の手洗いについて注意されたことがあります。

「マッサージの後は手を洗っちゃだめよ!寒いが毛穴に入り込んで、関節が動かなくなるデショー!」

と、真剣な表情で言われたのです。

私たち日本人にとって、施術後に手を洗うのはごく自然なことです。
衛生面の配慮はもちろん、気持ちを切り替える意味もあります。ですから思わず、

「え!?手を洗わなかったら、みんなどうしているの?」

と尋ねてしまいました。

すると返ってきたのは、

「フィリピン人はアルコホール(アルコール)で消毒よ!」

との答え。

なるほど、文化が違えば方法も違うのだと感心しました。
後日、その方からフィリピン産のアルコールをプレゼントしていただいたのですが、それがまた驚くほど香料の強いものでした。(笑)

南国らしい華やかで力強い香り。
異国の風を感じるようなその匂いはとても印象的でしたが、普段の施術で使うには少し個性が強く、結局しばらく大切にしまったままになってしまいました。。。

衛生観念やエネルギー観は国によってさまざまです。
「手を洗う」という当たり前も、世界を見渡せば決して一つではありません。

そんな文化の違いを思い出すたびに、施術という仕事は、人の体だけでなく、その人の背景や価値観にも触れる営みなのだと感じます。

佐藤香織|鍼灸師

2008年より施術の世界へ。

コメント

この記事へのコメントはありません。

関連記事

  1. 五行論における「火(か)」の性質について詳しく解説
  2. 自律神経の不調を整える ― 西洋医学と東洋医学、両方の知恵から
  3. 二十四節気(にじゅうしせっき)とは?
  4. 季節の変わり目、体調不良のサインとは ― 東洋医学 × 西洋医学で読み解く ―
  5. 針治療のズーンとする感覚、「響き」とは?
  6. 施術を受けるということ ―身体を通しての自己との出会い
  7. 東洋医学の「肺」と西洋医学の「肺」:働きの違いを詳しく解説
  8. 膝の前が痛い?それ、もしかすると「膝蓋下脂肪体炎」かもしれません
  9. 胃の大切さ ― 東洋医学から見た身体の中心
  10. 細絡(さいらく)の東洋医学的な見解
Today’s popular articles-今日の人気記事

PAGE TOP