秋は東洋医学で「肺」の季節とされ、呼吸器や皮膚、免疫などの不調が出やすくなる時期です。
しかし、西洋医学で考える「肺」と、東洋医学の「肺」はその概念が異なります。ここでは両者の違いと働きについて詳しく比較しながら解説します。
東洋医学における「肺」の働き
東洋医学では「肺」は五臓のひとつで、単なる臓器というよりも「気(エネルギー)と水分の循環を調整し、体表を守る機能を持つ重要な存在」とされています。
① 呼吸と気の巡りを司る(宣発・粛降作用)
-
肺は「気」を全身に送り出す(宣発)と同時に、気を体内に取り込む(粛降)作用を担います。
-
呼吸を通じて体の内外をつなぎ、気の循環をスムーズに保ちます。
🌿 例:
-
息切れ・浅い呼吸 → 肺気虚
-
咳・鼻づまり → 肺気の不調
② 体表を守り、免疫を調整(衛気)
-
肺は「衛気(えき)」と呼ばれるバリア機能を司り、風邪やウイルスの侵入を防ぎます。
-
肌や粘膜を潤し、発汗の調節も行います。
🌿 例:
-
風邪をひきやすい → 衛気の弱化
-
汗が止まらない・汗をかけない → 肺機能のバランス不良
③ 水分代謝を助け、潤いを保つ
-
肺は「水の通り道」とされ、体内の潤い(津液)を調整します。
-
肺が乾燥すると、咳、喉の痛み、肌荒れなどの症状が出やすくなります。
🌿 例:
-
空咳・喉の渇き → 肺陰虚
-
肌のかさつき・便秘 → 肺の潤い不足
西洋医学における「肺」の働き
西洋医学では、肺は胸腔内にある実際の臓器として、主に以下の役割を担います。
① 酸素と二酸化炭素の交換(ガス交換)
-
吸気に含まれる酸素を血液に取り込み、同時に血中の二酸化炭素を排出します。
-
肺胞と毛細血管でのガス交換が重要な機能です。
🧬 例:
-
肺炎、喘息、COPDなどでガス交換が障害される
② 呼吸調節機能
-
脳幹と連携しながら、呼吸のリズムや速さを自律的に調整しています。
-
酸素不足や運動時には自然と呼吸数が増えるなどの調節機能があります。
③ 呼吸に関係する器官の保護と異物排除
-
鼻・咽頭・気管・気管支を通じて空気をろ過・加湿・温める
-
咳反射や粘液により異物を排除
🧬 例:
-
アレルギー性鼻炎、気管支炎など
東洋医学と西洋医学の違いを比較
| 観点 | 東洋医学の「肺」 | 西洋医学の「肺」 |
|---|---|---|
| 概念 | 気と水の巡りを司る機能的・エネルギー的な臓器 | 呼吸に関わる実際の臓器 |
| 主な働き | 宣発・粛降、水分代謝、免疫調整 | 酸素と二酸化炭素の交換、異物排除 |
| 関係する症状 | 咳、乾燥、肌荒れ、風邪、便秘など | 肺炎、喘息、呼吸困難、低酸素症など |
| 治療アプローチ | 漢方、鍼灸、食養生、呼吸法、保湿など | 薬物療法、吸入器、リハビリ、酸素療法など |
まとめ
🔸 東洋医学の「肺」は、呼吸だけでなく気・水分の巡り、肌・粘膜の潤い、免疫力に関わる機能的概念。
🔸 西洋医学の「肺」は、酸素交換などの生命維持に不可欠な臓器で、実体のある臓器として捉えられる。
🔸 東洋医学は「全身の調和・未病予防」、西洋医学は「明確な病因・機能障害の治療」を重視。
🫁 肺をいたわるには、「潤い」と「深い呼吸」がカギ!
秋は乾燥と寒暖差が激しいため、しっかり保湿し、穏やかな呼吸法や潤いを補う食材を取り入れましょう🌿
📚 参考文献
-
『黄帝内経』 – 東洋医学の古典
-
『中医薬膳学』 – 中医薬膳研究会 編
-
『現代の西洋医学と生理学』 – 医学書院
-
厚生労働省「e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp
コメント