更年期障害は、「腎(じん)」の衰えと気血(きけつ)の乱れが原因と考えられます。東洋医学では、更年期を単なるホルモンバランスの変化ではなく、「体全体のエネルギーの変化とバランスの乱れ」として捉えます。
特に、腎・肝・脾の機能低下が影響し、ホットフラッシュ、冷え、不眠、イライラ、めまいなどの症状が現れます。
1. 東洋医学における更年期障害の主な原因
① 腎虚(じんきょ) – 腎のエネルギー不足
東洋医学では「腎(じん)」が生命エネルギーの源とされ、更年期に腎の衰えが進むことで様々な症状が現れます。
🔹 特徴的な症状:
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のぼせ、ほてり、ホットフラッシュ(特に夜間)
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冷えやすい、疲れやすい
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耳鳴り、めまい、物忘れ
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腰や膝の痛み、骨密度の低下
🔹 主な原因:
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加齢による腎精(じんせい)の減少
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過労や睡眠不足
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生殖機能の低下(特に閉経後)
🔹 治療法:
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腎を補う食べ物を摂る(補腎)
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黒ゴマ、黒豆、くるみ、ナツメ、山芋
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ウナギ、エビ、豚骨スープ
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腎を温める(温かい飲み物・入浴・カイロ)
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腎を補う漢方薬
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六味地黄丸(ろくみじおうがん)
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八味地黄丸(はちみじおうがん)
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② 肝気鬱結(かんきうっけつ) – ストレスによる気の滞り
更年期はホルモンバランスの乱れだけでなく、ストレスや環境の変化によって肝の気が滞ることで、情緒不安定になりやすくなります。
🔹 特徴的な症状:
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イライラ、怒りっぽい、不安感
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抑うつ気分、涙もろい
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喉の詰まり感、ため息が多い
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胃の不調、食欲不振、膨満感
🔹 主な原因:
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ホルモンバランスの変化
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ストレス、家族関係の変化
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肝の気の巡りが悪くなる
🔹 治療法:
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ストレスを和らげる食べ物を摂る
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柑橘類(レモン・グレープフルーツ)
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香味野菜(シソ・パクチー・ミント)
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ハーブティー(カモミール・ラベンダー)
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肝の気を巡らせるツボ押し
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「太衝(たいしょう)」足の甲にあるツボ(リラックス効果)
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「百会(ひゃくえ)」頭頂部にあるツボ(気を整える)
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肝の気を巡らせる漢方薬
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加味逍遙散(かみしょうようさん)
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③ 気血両虚(きけつりょうきょ) – 気と血の不足
閉経後、血(けつ)の生成が減少し、気も不足しやすくなります。その結果、疲れやすくなったり、めまいや立ちくらみが起こります。
🔹 特徴的な症状:
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疲れやすい、気力が出ない
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めまい、立ちくらみ
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顔色が青白い、乾燥肌、髪がパサつく
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動悸、不眠、夢をよく見る
🔹 主な原因:
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食事の栄養不足
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血液の循環不良(瘀血)
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長年のストレスや消耗
🔹 治療法:
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血を補う食べ物を摂る(補血)
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レバー、ほうれん草、プルーン、クコの実
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ナツメ、大豆、黒豆
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気を補う食べ物を摂る(補気)
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玄米、山芋、大豆
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血を補う漢方薬
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四物湯(しもつとう)
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④ 瘀血(おけつ) – 血の巡りが悪い
ホルモンの変化で血流が悪くなり、「瘀血(おけつ)」という血の滞りが起こります。
🔹 特徴的な症状:
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頭痛、肩こり、冷え性
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しみ・くすみ・肌荒れ
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関節痛、こわばり
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月経不順、経血が黒っぽい
🔹 主な原因:
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運動不足
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冷え(血流が悪くなる)
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長年のストレス
🔹 治療法:
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血行を良くする食べ物を摂る(活血)
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生姜、シナモン、黒酢、にんにく
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青魚(サバ・イワシ)
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お風呂にしっかり入る(温熱療法)
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血行を良くする漢方薬
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桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
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2. 東洋医学的な更年期障害の治療法
① 鍼灸(しんきゅう)
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ホットフラッシュ・のぼせ:「三陰交(さんいんこう)」
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不眠・ストレス:「百会(ひゃくえ)」「神門(しんもん)」
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腰痛・疲れ:「腎兪(じんゆ)」「太谿(たいけい)」
② 漢方薬
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腎虚タイプ:六味地黄丸、八味地黄丸
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肝気鬱結タイプ:加味逍遙散
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気血両虚タイプ:四物湯、補中益気湯
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瘀血タイプ:桂枝茯苓丸
※漢方は専門の薬剤師や医師の相談して処方してもらいましょう。
③ 生活習慣の改善
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ストレスを減らす(趣味やリラックス法を取り入れる)
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冷え対策(カイロ・温かい飲み物)
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適度な運動(ウォーキング・ヨガ)
まとめ
更年期障害は、腎の衰え、肝の気滞、気血の不足、瘀血の滞りが原因となることが多いです。症状に応じて、食事・鍼灸・漢方薬・生活改善を組み合わせることで、より快適な更年期を過ごすことができます。
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