「寝ても寝ても眠い」という状態には、さまざまな原因が考えられます。東洋医学と西洋医学ではその捉え方が異なりますが、両方の視点をあわせてご説明いたします。
東洋医学の視点
東洋医学では、体のバランス(陰陽、五行、気血水など)が乱れることで「眠気」や「だるさ」が生じると考えられています。
1. 気虚(ききょ)・脾虚(ひきょ)
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脾(ひ)は、消化吸収を司る臓器とされ、気を生み出す源です。
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脾の働きが弱いと、気が不足(=気虚)し、疲れやすく、常に眠い状態に。
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特に甘いものの摂りすぎ、冷たい飲食物、過労が原因に。
2. 肝鬱(かんうつ)
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精神的ストレスにより、気の流れが滞る状態。これが「肝鬱」です。
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気が巡らなくなると、眠りの質も下がり、日中に強い眠気を感じることがあります。
3. 腎虚(じんきょ)
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腎は「精」を蓄える臓器。年齢や過労、性エネルギーの使いすぎで腎が弱ると、慢性的な疲労感と眠気が出ます。
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特に高齢者や慢性疾患がある方に多いです。
4. 季節との関係(特に春と梅雨)
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春:肝が活発になり、気の巡りが悪いと眠気が強くなる。
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梅雨:湿気(湿邪)が体内にたまり、「だるい・眠い・重い」といった症状を引き起こす。
西洋医学の視点
西洋医学では、「過眠」の原因は多岐にわたります。
1. 睡眠の質の低下
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睡眠時無呼吸症候群(SAS):寝ていても呼吸が止まることで、深い睡眠が得られず日中に強い眠気が出ます。
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不眠症やストレス性の浅い睡眠:眠った気がしない → 日中に眠気が残る。
2. 睡眠障害
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ナルコレプシー:日中に突然強い眠気や脱力が起こる神経疾患。
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概日リズム障害:体内時計が乱れて、日中に眠くなる。
3. 内分泌・代謝異常
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甲状腺機能低下症:代謝が落ちて常にだるく、眠気が強い。
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糖尿病や低血糖症:血糖のコントロールが不安定だと眠気を引き起こします。
4. 精神的な原因
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うつ病:過眠が症状の一つ。エネルギーが枯渇したような感覚で、眠っても眠気が取れません。
5. 薬剤の副作用
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抗ヒスタミン薬、睡眠導入剤、抗うつ薬などの副作用で強い眠気を感じる場合も。
6. 更年期に伴うホルモン変化
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エストロゲンの減少 → 睡眠の質の低下、体温調節の乱れ、情緒不安定などが起こります。
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通常は「不眠」が起こりやすいですが、反対に「だるさ・疲労・うつっぽさ」となり、日中の眠気や過眠に現れることも。
まとめとアドバイス
原因 | 東洋医学 | 西洋医学 |
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気・血の不足 | 気虚・脾虚 | 栄養不足、甲状腺異常 |
睡眠の質の低下 | 肝鬱、湿邪 | 睡眠時無呼吸、うつ |
季節・天気の影響 | 梅雨の湿邪、春の肝 | セロトニン分泌の変化 |
加齢や慢性疾患 | 腎虚 | 神経変性、代謝異常、更年期症状 |
もし「眠気」が1ヶ月以上続く場合は、病院での検査(血液検査、睡眠検査)をおすすめします。
セルフケアのポイント
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早寝早起き、朝日を浴びる(体内時計を整える)
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冷たい食事・甘いものを控える
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軽い運動(気の巡り改善)
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春〜梅雨は特に体調を整える意識を
信頼参考文献:
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日本東洋医学会『東洋医学概論』
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日本睡眠学会『睡眠障害の診療ガイドライン』
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厚生労働省 e-ヘルスネット「過眠」
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