「難聴(なんちょう)」とは、聴力が低下して音や言葉が聞き取りにくくなる状態を指します。年齢に関係なく誰にでも起こり得るもので、その種類や原因、治療法によってアプローチが異なります。
以下に、難聴の種類、原因、症状、検査法、治療法、予防などを体系的に詳しく解説いたします。
難聴の種類(分類)
難聴は主に以下の3つのタイプに分けられます:
① 伝音性難聴(でんおんせいなんちょう)
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外耳または中耳に問題がある
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音の伝達経路(鼓膜・耳小骨など)に障害がある状態
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比較的治療がしやすい
主な原因:
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中耳炎、耳垢栓塞(じこうせんそく)、鼓膜穿孔(破れ)
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耳硬化症(耳小骨の異常)、外耳道の閉塞
症状:
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音は小さく聞こえるが、はっきりすれば理解できる
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自分の声が響く感じがある
② 感音性難聴(かんおんせいなんちょう)
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内耳(蝸牛)または聴神経に問題がある
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音の“感知”に障害があり、最も多いタイプの難聴
主な原因:
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加齢(老人性難聴)、騒音曝露、突発性難聴
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メニエール病、聴神経腫瘍、薬物性難聴(抗がん剤など)
症状:
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音は聞こえても、ことばが聞き取りにくい
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耳鳴り・めまいを伴うことがある
③ 混合性難聴(こんごうせいなんちょう)
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伝音性 + 感音性が混在している難聴
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例えば、鼓膜損傷+加齢による内耳の障害 など
難聴の程度(聴力レベル)
程度 | 聴力レベル(dB) | 日常生活への影響例 |
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正常 | ~25dB | 囁き声も聞こえる |
軽度 | 26~40dB | 小さな声・騒がしい環境で聞き取りにくい |
中等度 | 41~70dB | 通常の会話が困難 |
高度 | 71~90dB | 大きな声でも聞き取りが難しい |
重度 | 91dB以上 | 補聴器や人工内耳が必要 |
難聴の診断方法
検査法 | 内容 |
---|---|
純音聴力検査 | 各周波数ごとの音が聞こえるか調べる |
語音聴力検査 | 言葉の聞き取り能力を調べる |
ティンパノメトリー | 中耳の圧力や鼓膜の動きを調べる |
ABR(聴性脳幹反応) | 脳の反応を電極で測定(新生児や高齢者にも) |
画像検査(CT/MRI) | 内耳・脳神経の構造異常がないか調べる |
難聴の治療法
🔹 伝音性難聴の治療
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耳垢除去、抗生物質(中耳炎)
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鼓膜形成術、耳小骨再建術
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補聴器装用
🔹 感音性難聴の治療
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突発性難聴 → ステロイド治療、血流改善薬、高気圧酸素療法(急性期が鍵)
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加齢性難聴・騒音性難聴 → 根本的な治療は難しい → 補聴器・人工内耳
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メニエール病 → 利尿薬、ストレス管理、鍼灸治療なども検討される
🔹 補聴器・人工内耳
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補聴器:軽~中等度難聴に有効
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人工内耳:重度難聴で効果が乏しい場合に手術で挿入する
東洋医学的アプローチ
東洋医学では、「腎」は耳と関係が深いとされ、難聴は「腎虚(じんきょ)」「肝気鬱結(かんきうっけつ)」によると考えられています。
方法 | 内容 |
---|---|
漢方薬 | 六味地黄丸、杞菊地黄丸、柴胡加竜骨牡蛎湯など |
鍼灸 | 聴会、翳風、腎兪、太谿などのツボを使う |
食養生 | 黒ゴマ、クルミ、山芋、なつめなど腎を補う食品 |
難聴の予防・生活の工夫
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大音量の音楽や騒音を避ける(イヤホン・ライブ等)
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耳掃除のしすぎに注意(外耳道を傷つけない)
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定期的な聴力検査(特に高齢者)
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高血圧・糖尿病など生活習慣病の管理(内耳への血流が関係)
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ストレスと睡眠を大切にする(自律神経のバランスを保つ)
まとめ
分類 | 原因・特徴 | 治療法 |
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伝音性難聴 | 中耳・鼓膜の障害 | 医療処置・手術・補聴器 |
感音性難聴 | 内耳・神経の障害 | 薬物療法・補聴器・人工内耳・東洋医学的治療など |
混合性難聴 | 両方の合併 | 組み合わせた治療法 |
🌐参考:
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日本耳鼻咽喉科学会「難聴診療ガイドライン」
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厚生労働省「加齢性難聴と補聴器」
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日本東洋医学会「耳の疾患と漢方治療」
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