突然片耳(まれに両耳)に起こる原因不明の急性感音性難聴で、放置すると回復が難しくなることもあるため、早期の対応がとても重要です。
定義
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突然(数時間~3日以内)に発症する感音性難聴
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通常は片耳のみ(約98%)
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原因不明(「突発性」とされる)
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騒音、打撲、慢性疾患など明確な誘因がない
症状
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突然の聴力低下(片耳が聞こえにくい、聞こえない)
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耳鳴り(高音が多い)
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耳の閉塞感(耳が詰まったような感じ)
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めまい(約3割程度に見られる)
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吐き気や平衡感覚の異常(めまいがある場合)
診断基準(日本耳鼻咽喉科学会)
以下の3点を満たすことが診断の目安です:
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原因不明の感音性難聴
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突然発症し、72時間以内に最大の聴力低下に至る
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難聴の程度が30dB以上、3つ以上の周波数帯で認められる
原因(あくまで仮説)
突発性難聴の正確な原因は不明ですが、次のような要因が関与していると考えられています:
仮説 | 内容 |
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ウイルス感染説 | 内耳や聴神経にウイルスが侵入(ヘルペスなど) |
血流障害説 | 内耳への血流が一時的に途絶える |
自己免疫説 | 自分の免疫が内耳を攻撃する可能性 |
ストレスや自律神経失調 | 精神的・肉体的ストレスによる内耳機能の低下 |
治療法(西洋医学)
初期治療が非常に重要(発症後1週間以内が鍵)
治療法 | 内容 |
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ステロイド療法 | 内耳の炎症・浮腫を抑える(プレドニゾロンなど) |
血流改善薬 | 内耳の血流改善(プロスタグランジン製剤など) |
高気圧酸素療法 | 酸素を多く取り込み、内耳の機能回復を助ける |
安静・ストレス軽減 | 睡眠・ストレスの管理も非常に重要 |
入院することもあります(特に重症例やめまいを伴う場合)
東洋医学でのアプローチ
東洋医学では、「肝気鬱結(かんきうっけつ)」「気血両虚」「風熱の侵入」など、体内バランスの崩れとして解釈されます。
方法 | 内容 |
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漢方薬 | 柴胡加竜骨牡蛎湯、八味地黄丸などが用いられることがある |
鍼灸 | 聴会、風池、太谿など耳と肝・腎経絡の調整 |
食養生・養生法 | 冷えの改善・ストレス対策・十分な休養 |
※漢方は個人の体質により異なるため、専門家への相談が推奨されます。
予後・回復率
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回復率:約60~70%
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発症から48時間以内に治療を開始した場合、最も回復が望める
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重症度が高い(聴力の落ち方が大きい)と、回復率は低くなる
注意点
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完全に回復しない場合、「感音性難聴」として後遺症が残る可能性もあり
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再発はまれだが、メニエール病や前庭神経炎との鑑別も重要
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難聴が続く場合は、補聴器や聴覚リハビリの検討も必要
まとめ
項目 | 内容 |
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発症 | 突然・原因不明(通常は片耳) |
主な症状 | 聴力低下、耳鳴り、閉塞感、めまい |
治療 | ステロイド、血流改善薬、高気圧酸素療法など |
東洋医学的視点 | 肝・腎の不調、気血の乱れ、風邪の侵入など |
予後 | 早期治療がカギ。発症後48時間以内が最も重要 |
🌐参考:
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日本耳鼻咽喉科学会「突発性難聴診療ガイドライン(2020年改訂)」
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厚生労働省「感音性難聴の治療と対応」
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日本東洋医学会資料「感音性難聴に対する鍼灸・漢方の応用」
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