肩こりは東洋医学では、気血(きけつ)の巡りが悪くなり、経絡(けいらく)の流れが滞ることで生じると考えられます。現代医学では「筋肉の緊張や血行不良」が主な原因とされますが、東洋医学では**「五臓六腑の不調」「ストレス」「冷え」「瘀血(おけつ)」**など、全身のバランスの乱れが影響していると考えます。
1. 東洋医学における肩こりの主な原因
① 気滞血瘀(きたいけつお) – 気と血の滞り
ストレスや疲労によって気(エネルギー)の流れが滞ると、血の巡りも悪くなり、肩こりが生じます。特に、長時間の同じ姿勢や運動不足があると、血流が悪化し「瘀血(おけつ)」と呼ばれる血の滞りが発生します。
🔹 特徴的な症状:
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肩や首の張り感、コリが強い
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動かすと痛い、こわばる
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押すと痛い部分がある(トリガーポイント)
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頭痛やめまいを伴うこともある
🔹 主な原因:
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長時間のデスクワークやスマホの使用
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運動不足や血行不良
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ストレスや精神的な緊張
🔹 治療法:
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血流を良くする食べ物を摂る(活血)
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生姜、シナモン、黒酢、にんにく
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青魚(サバ・イワシ)
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お風呂で温める(血流促進)
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ツボ押し(肩井(けんせい)、合谷(ごうこく))
② 肝気鬱結(かんきうっけつ) – ストレスによる気の滞り
「肝(かん)」は気の流れをコントロールする臓器ですが、ストレスが多いと肝の働きが低下し、気の巡りが悪くなります。その結果、肩こりや首のこりが生じやすくなります。
🔹 特徴的な症状:
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ストレスがたまると肩がこる
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イライラしやすい、不安感がある
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ため息が多い、胃がもたれる
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肩の張りがひどくなると頭痛が起こる
🔹 主な原因:
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精神的ストレス、イライラ
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長時間の緊張状態(仕事・人間関係)
🔹 治療法:
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リラックス効果のある食べ物を摂る(疏肝理気)
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柑橘類(レモン・グレープフルーツ)
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香味野菜(シソ・パクチー・ミント)
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ハーブティー(カモミール・ラベンダー)
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肝の気を巡らせるツボ押し
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「太衝(たいしょう)」足の甲にあるツボ(ストレス緩和)
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「百会(ひゃくえ)」頭頂部のツボ(気を整える)
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ストレス解消(軽い運動・深呼吸)
③ 気血両虚(きけつりょうきょ) – 気と血の不足
気や血が不足すると、筋肉や組織に十分な栄養が行き渡らず、肩こりが生じやすくなります。特に、女性に多く見られるタイプです。
🔹 特徴的な症状:
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肩が重く、だるい感じがする
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疲れやすい、息切れしやすい
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顔色が青白い、めまいがする
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髪がパサつく、爪がもろい
🔹 主な原因:
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栄養不足、食事の偏り
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貧血や血流の低下
🔹 治療法:
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血を補う食べ物を摂る(補血)
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レバー、ほうれん草、プルーン、クコの実
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ナツメ、大豆、黒豆
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気を補う食べ物を摂る(補気)
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玄米、山芋、大豆
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血を補う漢方薬(四物湯、補中益気湯)
④ 寒湿(かんしつ) – 冷えや湿気による肩こり
寒さや湿気が体に入ると、気血の巡りが悪くなり、肩がこわばって痛みが生じます。特に、冷え性の人や寒い季節に多く見られます。
🔹 特徴的な症状:
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寒いと肩がこる、痛みが悪化する
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湿気の多い日は肩が重だるい
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関節がこわばる、むくみがある
🔹 主な原因:
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冷えた環境に長時間いる
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湿気の多い場所に住んでいる
🔹 治療法:
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体を温める(温陽)
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しょうが湯、紅茶、シナモンティー
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お風呂に入る(特に肩まで浸かる)
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冷たい飲食を避ける
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ツボ押しで温める(腎兪(じんゆ)、大椎(だいつい))
2. 東洋医学的な肩こりの治療法
① 鍼灸(しんきゅう)
🔹 肩こり全般に効果的なツボ
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肩井(けんせい)(肩の中央) → コリをほぐす
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天柱(てんちゅう)(首の後ろ) → 血流を改善
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合谷(ごうこく)(手の甲) → 気血の巡りを促進
② 漢方薬
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気滞血瘀タイプ:桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
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肝気鬱結タイプ:加味逍遙散(かみしょうようさん)
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気血両虚タイプ:四物湯(しもつとう)
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寒湿タイプ:独活寄生湯(どっかつきせいとう)
③ 生活習慣の改善
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ストレスを減らす(趣味やリラックス法を取り入れる)
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肩を冷やさない(マフラー・温熱シート)
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適度な運動(ウォーキング・ヨガ・ストレッチ)
まとめ
東洋医学では、肩こりは気血の滞り、ストレス、冷え、気血不足などが原因で起こると考えられています。ツボ押し・食事・漢方薬・運動を組み合わせることで、肩こりを根本から改善することができます。
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