
東洋医学で春は【肝】の季節と考えられています。そのため、この季節は肝に関わる不調が表れる方が増えてきますが、肝の不調というと肝臓の病気と勘違いされる方もいらっしゃいます。
本日は東洋医学でいう肝のお話を西洋医学で考える肝臓と比較してまとめて解説します!
東洋医学と西洋医学では、「肝(かん)」や「肝臓」の概念が異なります。西洋医学では、肝臓(Liver)は具体的な臓器を指し、その働きも解剖学や生理学に基づいて説明されます。一方、東洋医学では、「肝」は単なる臓器ではなく、エネルギー(気・血)の流れや精神活動を含めた機能的な概念として捉えられています。
🟢 1. 東洋医学における「肝」の働き
東洋医学では、「肝」は五臓(肝・心・脾・肺・腎)のひとつであり、以下のような役割を持ちます。
① 気の流れ(疏泄〈そせつ〉作用)を調整する
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「気(エネルギー)」の流れをスムーズにするのが肝の主な役割です。
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気が滞るとストレスが溜まり、イライラや抑うつ、不眠の原因になります。
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ストレスが原因で胃が痛くなるのも、肝の気がスムーズに流れないことが関係しています。
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自律神経の調整にも関与し、緊張やリラックスのバランスを取ります。
🌿 例:
「ストレスで胃が痛くなる」「イライラすると肩がこる」「感情が不安定になる」などは、肝の疏泄作用の異常と考えられます。
② 血を蓄え、全身に巡らせる(蔵血〈ぞうけつ〉作用)
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肝は血(けつ)を貯蔵し、必要に応じて全身に供給する働きを持っています。
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体を動かすときには血を筋肉に送り、休むときには血を内臓や脳に戻します。
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目、筋肉、生殖機能、月経などとも深く関係しています。
🌿 例:
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目の疲れ → 肝の血が不足(肝血虚)
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筋肉のけいれんや足のつり → 肝の血の巡りが悪い
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月経不順やPMS → 肝の血の滞り(瘀血〈おけつ〉)
③ 精神活動や情緒に影響を与える
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東洋医学では、肝は「怒り」と関連する臓器とされます。
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ストレスや怒りが強いと肝の気が滞り、情緒不安定になります。
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気の流れが良ければ、精神的に落ち着き、ストレス耐性が上がります。
🌿 例:
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すぐ怒る、イライラしやすい → 肝の気の滞り(肝気鬱結)
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抑うつ状態、ため息が多い → 肝の機能低下
🟠 2. 西洋医学における「肝臓」の働き
一方、西洋医学では、肝臓は人体最大の臓器であり、多くの生命維持機能を担っています。主な役割は以下の通りです。
① 代謝(栄養素の処理・貯蔵)
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食事から摂取した栄養素(糖・脂質・タンパク質)を分解・合成し、エネルギーを供給する。
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グルコース(ブドウ糖)をグリコーゲンとして貯蔵し、必要に応じて放出することで血糖値を調整する。
🧬 例:
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肝臓が機能しないと、低血糖や栄養不足になる。
② 解毒作用
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アルコールや薬物、老廃物を分解し、体外に排出しやすくする。
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体に有害なアンモニアを尿素に変え、腎臓から排出。
🧬 例:
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肝機能が低下すると、アルコールの分解が遅れ、二日酔いになりやすい。
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肝硬変になると、有害物質が体に溜まり、意識障害(肝性脳症)を引き起こす。
③ 胆汁の生成(消化を助ける)
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脂肪の消化を助ける「胆汁」を作り、胆のうに貯蔵する。
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胆汁が分泌されないと、脂肪の消化・吸収が困難になる。
🧬 例:
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肝臓が悪くなると、油ものを食べると胃もたれしやすくなる。
🔵 3. 東洋医学と西洋医学の違いを比較
東洋医学の「肝」 | 西洋医学の「肝臓」 | |
---|---|---|
概念 | 体全体の機能を調整するエネルギーの中心 | 具体的な臓器(解剖学的に存在) |
主な役割 | 気の流れを調整し、血を蓄える | 栄養代謝、解毒、胆汁生成 |
関係する症状 | ストレス・イライラ・月経不順・目の疲れ | 肝炎・肝硬変・脂肪肝 |
治療法 | 鍼灸、漢方、気の巡りを改善する養生 | 薬物療法、食事療法、禁酒 |
🔶 まとめ
🔸 **東洋医学の「肝」**は、気や血の流れ、ストレス、感情、自律神経に深く関係する機能的な概念。
🔸 **西洋医学の「肝臓」**は、代謝や解毒、消化などを担う生命維持に不可欠な臓器。
🔸 東洋医学は「全身のバランス」を重視し、西洋医学は「臓器の機能」を重視する。
つまり、肝は「ストレスケアや血の巡り」に、肝臓は「代謝や解毒」に関わると考えると分かりやすいですね!✨
「肝をいたわるには、ストレスを減らし、血の巡りを良くすることが大切!」
ぜひ、適度な運動・深呼吸・バランスの良い食事で、肝の健康を守りましょう!🌿
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