1. 花粉症の概念(西洋医学的視点)
西洋医学において、花粉症(Allergic Rhinitis, Seasonal Allergic Rhinitis)は、特定の植物の花粉に対するアレルギー反応として定義されます。
これは、免疫系が本来無害な花粉を有害物質と誤認し、過剰に反応することで生じます。
主なメカニズムは以下の通りです。
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感作(Sensitization)
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花粉が鼻や目の粘膜に付着し、免疫系(特にヘルパーT細胞)が異物として認識する。
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B細胞が花粉に対するIgE抗体を産生し、肥満細胞(マスト細胞)に結合する。
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アレルギー反応の発症(Immediate Hypersensitivity)
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再び花粉が体内に侵入すると、肥満細胞がIgEを介してヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症性化学物質を放出する。
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これにより、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの症状が引き起こされる。
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2. 西洋医学における治療法
西洋医学では、花粉症の治療には以下の3つのアプローチがあります。
(1) 薬物療法
花粉症の症状を抑えるために、以下の薬が用いられます。
薬の種類 | 作用 | 代表的な薬 |
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抗ヒスタミン薬 | ヒスタミンの作用を抑え、くしゃみや鼻水を軽減 | フェキソフェナジン(アレグラ)、セチリジン(ジルテック)、ロラタジン(クラリチン) |
ロイコトリエン受容体拮抗薬 | 炎症を抑え、鼻詰まりを軽減 | モンテルカスト(シングレア) |
ステロイド点鼻薬 | 強力な抗炎症作用があり、鼻詰まり・くしゃみを抑える | フルチカゾン(フルナーゼ)、モメタゾン(ナゾネックス) |
血管収縮薬(点鼻薬) | 鼻粘膜の血管を収縮させ、鼻詰まりを改善 | オキシメタゾリン(ナシビン)※長期使用は推奨されない |
抗ヒスタミン薬は即効性があり、ステロイド点鼻薬は長期使用で効果が高まります。
(2) アレルゲン免疫療法(減感作療法)
花粉症の根本治療として、**アレルゲン免疫療法(アレルゲン特異的免疫療法, AIT)**が用いられます。
これは、少量の花粉エキスを体内に投与し、徐々に免疫系を慣れさせる方法です。
免疫療法の種類
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皮下免疫療法(SCIT):医療機関で注射による投与(数年かけて治療)
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舌下免疫療法(SLIT):舌の下に錠剤を投与(自宅で毎日服用可)
代表的な舌下免疫療法の薬:
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スギ花粉症:シダキュア
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ダニアレルギー:ミティキュア
(3) 生活習慣の改善と予防策
薬物療法と併用して、花粉の暴露を避けることが重要です。
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マスク・メガネの着用:花粉の侵入を防ぐ
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洗濯物の室内干し:屋外での花粉付着を防ぐ
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空気清浄機の使用:室内の花粉を除去
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帰宅時の花粉除去:玄関で衣類をはたく、すぐに洗顔・うがい
まとめ
西洋医学では、花粉症は免疫系の過剰反応による疾患と考えられています。
治療は、薬物療法・免疫療法・生活習慣の改善を組み合わせるのが基本です。
特に舌下免疫療法は、長期的に症状を軽減できる可能性があり、根本治療を目指す人におすすめです。
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